高認の倫理の傾向と対策

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今回は、高認(高等学校卒業程度認定試験)の倫理の試験の傾向と対策を解説します。
過去に実際に出題された倫理の問題を2問紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
出題元は、平成30年度第1回で、すべての問題と解答は下記から確認が可能です。

・問題
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/08/24/1407984_03.pdf

・解答
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2018/08/09/1407984_04.pdf

問1

次の会話文を読んで問いに答えよ。

 

コハル:最近「ふるさと納税」の人気がにわかに高まっているんですって。ふるさと納税による寄付金が、町税の約 3 倍も集まった町もあったそうよ。

 

ハルキ:ふるさと納税は、納税って言うけど、実際は、地方を財政面で応援するために、例えば、都市部の人が、都市部に住んで生活しながら、ふるさと(都道府県や市町村)に対して寄付を行うと所得税と住民税が控除されるっていうしくみだ。都市部に人やモノが集まる一方で、人口が減った地域は、経済が衰え、また人口が減るという悪循環に陥っている。そこで、自分の生まれたところはもちろん、学生生活や仕事でお世話になったなど、今の(a)自分を形成するのに少なからずかかわりがあった地域や、応援したい地域の力になりたいという思いを実現し、地域に貢献するための制度として、平成20 年に制度化されたんだよ。

 

問い:「(a)自分を形成する」に関連して、アメリカの心理学者エリクソンは、自我を確立すべき青年が、ときに自分を見失い精神的に危機的な状況になることを「アイデンティティの危機」と呼んだが、次のアとイは「アイデンティティの危機」の具体例を記述したものである。その正誤の組合せとしてもっとも適切なものを、下の1~4のうちから一つ選べ。

 

ア 僕は、機械いじりが好きで、将来、エンジニアになることが子どもの頃からの夢だったのだが、先日、学校の講演会にいらした発展途上国で医療活動に従事されている医師の方のお話をうかがい、エンジニアになろうか医師になろうか迷っている。

 

イ 私は今まで、明るく協調的に誰とでも仲良くできるのが長所だと思っていたのだが、友人から「あなたは、八方美人よね」と非難されて以来、自分に自信が持てなくなり、「自分はいったい何者なんだろう」と悩んでいる。

 

1ア-正  イ-正

2ア-正  イ-誤

3ア-誤  イ-正

4ア-誤  イ-誤

 

答えと解説

答えは3です。
ハルキは、ふるさと納税が、都市部とふるさとの間の問題を解決する手段になっていると話しています。そして、ふるさとが「自分を形成する」ことに関わっていると指摘しています。
問いは、この「自分を形成する」ことが、エリクソンの「アイデンティティの危機」と深く関係していることに注目しています。アイデンティティとは「自己同一性」や「自分が自分であること」と訳されます。
したがって「アイデンティティの危機」とは「自分が自分でなくなるかもしれない危険な状態」と理解することができます。

「ア」は、エンジニアになろうと医師になろうか迷っている状態であり、これは「危険な状態」ではないので、アイデンティティの危機ではなく「誤」となります。
「イ」は友人に「八方美人」と非難され、自分に自信が持てなくなっています。自信を失うことは「危機」であり「危険」です。また、「自分はいったい何者なんだろう」という悩みは「自分が自分であること」を見失いかねています。したがって、これはアイデンティティの危機に該当するので「正」です。

問2

次の会話文を読んで、問いに答えよ。

 

ゆうた:授業で地球環境問題を学習したけど、覚えることが多くて大変そうだよ。でも、授業で先生も「地球環境問題については内容を覚えるだけではなく、内容を理解することが大切だ」と言っていたから、理解を深めるように復習してみるよ。

 

ともや:僕も理解が大切だと復習してみて思ったよ。皆も授業中にノートを取っていると思うけど、僕のノートを見てみてよ。

 

【ともやのノート】

 

環境の倫理

(1) 地球温暖化への取組み

1992年 国連環境開発会議(地球サミット) ⇒ 気候変動枠組み条約採択

1997年 気候変動枠組み条約第 3 回締約国会議(地球温暖化防止京都会議)が日本で開催 温室効果ガスの具体的な削減目標等を義務づけた京都議定書採択

 

(2) 今後の課題

京都議定書の問題点⇒アメリカの離脱や発展途上国には削減目標がなく大きな成果上げられず!

世界の国別二酸化炭素排出量(上位 5 ヶ国)

1997年 アメリカ24% 中国14% ロシア6% 日本5% ドイツ4%

2015年 中国28% アメリカ16% インド6% ロシア5% 日本4%

 

1997 年以降、発展途上国の排出量が増加している!

・先進国の主張:現在では、途上国の排出量が世界全体の半分以上を占めるから途上国も削減に取組むべき!

・発展途上国の主張:温暖化は化石燃料を大量に使用してきた先進国の責任だから先進国が先に取組むべき!

・先進国と発展途上国の意見が対立! ⇒ 今後どうまとめていくべきか?

 

問い

「ともやのノート」にある「世界の国別二酸化炭素排出量」から読み取れる内容として、もっとも適切なものを、次の1~4のうちから一つ選べ。

 

1 1997年と比較して 2015年では、日本の割合が増加し、中国とロシアの割合が減少している。

 

2 1997年と比較して 2015年では、中国とロシアの割合が減少し、アメリカの割合が増加している。

 

3 1997年と比較して 2015年では、アメリカと日本の割合が減少し、中国の割合が増加している。

 

4 1997年と比較して 2015年では、日本の割合が増加し、中国とアメリカの割合が減少している。

 

答えと解説

答えは3です。
地球温暖化に関する問題ですので、一見すると難しそうに感じるかもしれませんが、問いは単純に「数字の移り変わり」を尋ねているだけです。
選択肢をみると、1~4のすべてに中国が登場しています。そのため、まずは中国に注目しましょう。中国の二酸化炭素排出量は1997年の14%から2015年の28%へと急増しています。したがって、「中国の割合が減少している」と書いてある1、2、4が間違っていることがわかります。
これにより、正解が3であることを導きだすことができます。
ただ念のため、選択肢3の内容もみてみましょう。3では「アメリカと日本が減少している」とも述べています。
1997→2015年は、日本は5→4%、アメリカは24→16%へと減っていますので、やはり3が正しいことがわかります。

傾向と対策

「倫理」と聞くと、それだけで「難しそう」と感じてしまうかもしれません。しかし、高認の倫理は「あまり難しいことは問わない」という傾向があります。そのため、高校1年生向けの教科書をしっかり読み込んでおけば合格点を取ることもそれほど難しくないでしょう。
ただ、やはり参考書と問題集はそれぞれ1冊ずつ購入し、しっかり勉強することをおすすめします。それによって教科書の内容をより深く理解できるようになるからです。

まとめ

高認の倫理は、苦手にする人が多いだけに出題内容は難しくしていません。高認は「落とす試験」ではなく「合格させる試験」ですので、ひねった問題が出ることも少ないでしょう。
しっかりと基礎を固めておけば合格点に届く試験ですので、ぜひ今回の傾向と対策を参考にしてみてください。

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