高校で不登校になるとどうなる?進路への影響や親がすべき対応とは
高校生の子どもが不登校になってしまった場合、どのような対応を取るべきか悩む保護者も多いでしょう。高校は義務教育ではないので、登校日数が足りないと留年、あるいは退学となる可能性もあります。将来への影響も考えると、早期に問題を解決することが重要です。
そこで今回は、不登校の状態が続いた場合の進路や将来への影響や、親がしてあげられるサポートなどを解説します。上記のような事態に直面し、今後に不安を抱える保護者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
不登校の定義
文部科学省では、不登校の定義を以下のとおり定めています。
何らかの心理的、情緒的、身体的あるいは社会的要因・背景により、登校しないあるいはしたくともできない状況にあるために年間30日以上欠席した者のうち、病気や経済的な理由による者を除いた者
不登校には、病気や経済的な理由による長期間の欠席を含めません。つまり不登校になる原因のほとんどが、学校生活や家庭環境、あるいは自身の生活の乱れに起因する心理的・情緒的なトラブルです。
そのため、不登校の生徒が登校を再開するためには原因の根本的な解決が必要となります。「時間が経てば解決する」といった簡単な話ではないので、これから子どもの不登校と向き合っていく方は十分理解しておきましょう。
不登校になる高校生は何人にひとり?割合を解説
ここでは、実際に不登校になる高校生の人数や割合を見ていきます。
文部科学省の調査によると、高等学校における不登校生徒の数および割合は以下のとおりです。
全体の在籍者数 | 不登校生徒の数 | 割合 | |
平成30年度 | 324万2,065人 | 5万2,723人 | 1.63% |
令和元年度 | 317万4,668人 | 5万100人 | 1.58% |
令和2年度 | 309万8,203人 | 4万3,051人 | 1.39% |
令和3年度 | 301万4,194人 | 5万985人 | 1.69% |
令和4年度 | 296万3,517人 | 6万575人 | 2.04% |
参考:文部科学省 令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
直近の令和4年度では、不登校になる高校生の数は全体で約6万人、およそ50人に1人の割合で存在することが分かりました。
意外に少ないと思われるかもしれませんが、あくまでこの数字は前述の「不登校の定義」に当てはまる方、つまり病気や経済的な理由以外で年間30日以上欠席した方の人数です。
すでに退学した生徒や、30日には満たないが長期間欠席している生徒などは含まれていません。このことから、心理的な要因で登校できず悩む生徒の数は、実際には上記の数字よりも多いと考えられます。
高校生が不登校になる3つの原因
高校生が不登校になる原因として、多いものが次の3つです。
- ・いじめや学業不振など学校に関わる原因
- ・家庭内の不和など家庭に関わる原因
- ・生活リズムの乱れなど本人に関わる原因
それぞれの原因について深く理解することが、適切な対応にも繋がります。詳しく見ていきましょう。
友人関係のトラブルや学業不振など学校に関わる原因
高校生が不登校になる原因として多いものが、学校生活にまつわるトラブルや不安です。
▼学校に関わる不登校の原因
※不登校の原因のうち、学校に関わる原因を抜粋
主な要因 | 人数 | 割合 |
いじめ | 118人 | 0.3% |
友人関係をめぐる問題 | 5,029人 | 10.7% |
教職員との関係 | 256人 | 0.5 % |
学業不振 | 3,139人 | 6.7% |
進路に対する不安 | 2,307 人 | 4.9% |
クラブ活動、部活動への不適応 | 487人 | 1.0% |
学校のきまり等をめぐる問題 | 458人 | 1.0% |
入学、転編入学、進級時の不適応 | 4,273人 | 9.1% |
合計 | 1万6,067人 | 34.2% |
参考:文部科学省 令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
文部科学省が全日制高校を対象に実施した調査結果を一部抜粋しました。上記のとおり、学校に関わる原因で不登校となった生徒は全体の約3割以上にものぼります。
内訳としては「友人関係をめぐる問題」が5,029人と最多であり、次いで多いのが「学業不振」や「進路に対する不安」など勉強面での不安です。
家庭内の不和などの家庭に関わる原因
家庭環境が原因で不登校になる生徒も、毎年一定数存在します。
▼家庭に関わる不登校の原因
※不登校の原因のうち、家庭に関わる原因を抜粋
主な要因 | 人数 | 割合 |
家庭の生活環境の急激な変化 | 753人 | 1.6% |
親子の関わり方 | 1,412人 | 3.0% |
家庭内の不和 | 874人 | 1.9% |
合計 | 3,039人 | 6.5% |
参考:文部科学省 令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
文部科学省が実施した同調査の結果によると、家庭環境が原因で不登校になった高校生の数は3,039人でした。この数字は、不登校の生徒全体の6.5%を占めています。
家庭環境に関わる原因として、最も多いのが「親子の関わり方」です。高校生は特に多感な時期なので、親への反発から不登校に移行するケースも少なくありません。
その他「生活環境の急激な変化」や「家庭内の不和」なども、家庭環境にまつわる不登校の主な原因です。
生活リズムの乱れなど本人に関わる原因
高校生が不登校になる原因として「本人に関わる原因」は最も高い割合を占めています。
▼本人に関わる不登校の原因
※不登校の原因のうち、本人に関わる原因を抜粋
主な要因 | 人数 | 割合 |
生活リズムの乱れ、あそび、非行 | 6,411 人 | 13.6% |
無気力、不安 | 1万7,963人 | 38.1% |
合計 | 2万4,374人 | 51.7% |
参考:文部科学省 令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について
「無気力、不安」が原因で不登校になった生徒の数は、全体の38.1%と最も高い割合です。この場合は本人だけで立ち直ることが難しく、心療内科への受診など専門機関への相談が必要なケースもあります。初期段階で異変に気付き、周囲がサポートしてあげることが大切です。
また「生活リズムの乱れ、あそび、非行」が原因で不登校になる高校生も約1割以上存在します。親や学校の先生に対する反抗心がきっかけとなるケースもあれば「友達に仲間外れにされたくない」など特別な事情から非行に走ってしまうケースもあるので、まずは子どもの話をしっかり聞いてあげましょう。
高校で不登校の状態が続くとどうなる?
不登校の状態が続くことで、以下のような影響が考えられます。
- ・単位が取得できず留年となってしまう
- ・高校の卒業資格を取得できなくなる
それぞれ詳しく見ていきましょう。
単位が取得できず留年となってしまう
高校で次の学年に進級するためには「単位」の取得が必要です。
単位取得の条件は学校によって若干の違いがありますが、ほとんどの学校が「成績」および「出席日数」を単位取得の条件として定めています。そのため、不登校が続いて出席日数が不足すると単位が取得できなくなり、留年の可能性が高まってしまいます。
一般的に多いのが、科目ごとに決められた出席日数のうち、4分の1または3分の1以上欠席した場合に留年とするケースです。
高校の卒業資格を取得できなくなる
留年となり必要な単位を取得できなければ、高校を卒業できません。
高校を卒業できないということは、高校卒業資格を取得できないということです。一般的に、高校卒業資格が取得できないと大学への進学や就職・転職活動が不利になると言われており、今後のキャリアに重大な影響を与える可能性があります。
留年できる回数や期間の定めは、学校によりさまざまです。しかし、あまりにも長く不登校の期間が続くと「卒業が難しい」と判断され、学校側から退学処分や自主退学勧告が言い渡されることもあります。時間が経過するほど、登校を再開するのは難しくなると考えましょう。
高校では「出席扱い制度」が利用できない
不登校の生徒をサポートする制度として「出席扱い制度」があります。この制度を利用して、子どもの退学や留年を回避したいと考える保護者は多いのではないでしょうか。
出席扱い制度は文部科学省が令和元年から開始した制度で、特別な事情があって登校が困難となった生徒を対象に、自宅学習を行うことで「出席扱い」と認定するものです。学校には通えないけれど、進級や進学を諦めたくないと考える生徒にとって、非常に心強い制度と言えます。
しかし、出席扱い制度の対象は小学校と中学校に通う生徒のみであり、高校生は含まれません。そのため高校で不登校になってしまった場合は、他の選択肢を検討する必要があります。
不登校の高校生に親がしてあげられること
不登校の問題を解決するためには、周囲のサポートが必要です。ここでは不登校の高校生に親がしてあげられることとして、以下の3つの対処法を紹介します。
- ・子どもの話に耳を傾ける
- ・心療内科やスクールカウンセラーへ相談する
- ・全日制高校に通う以外の選択肢を模索する
ぜひ参考にしてみてください。
子どもの話に耳を傾ける
子どもの将来を思えばこそ、ついつい叱ってしまったり、頭ごなしに否定してしまったりするケースがあります。しかし、それにより親子関係が悪化してしまっては、問題の解決はさらに難しくなるでしょう。
子どもの話に耳を傾け、コミュニケーションの量を増やしていくことが、根本的な問題解決への近道です。「心配をかけたくない」、「悲しませたくない」などの理由から、親に自身の悩みを打ち明けられない高校生もいます。無理に聞き出そうとせず、まずはゆっくり話を聞いてあげる姿勢が重要です。
心療内科やスクールカウンセラーへ相談する
家族や学校の先生だけで解決が難しい場合は、「スクールカウンセラー」への相談も検討しましょう。
スクールカウンセラーとは、生徒の悩みや不安を解決する「心の専門家」です。子どもが不登校になってしまった場合には、学校復帰や原因の解決に向けた専門的なサポートが受けられます。子ども自身の相談はもちろん、保護者の相談にも乗ってもらえるので、子どもとの関わり方やサポート方法に悩む際は積極的に活用してください。
スクールカウンセラーは各学校に配置されているので、面談を希望する際は基本的に学校経由での申し込みです。ただし学校に所属している訳ではなく、あくまで外部から派遣された専門家としての立場で面談してもらえるので、学校側に聞かれたくないような内容でも安心して相談できます。
全日制高校に通う以外の選択肢を模索する
子どもが不登校になった際は、全日制高校以外の選択肢に目を向けることも重要です。
全日制高校以外の選択肢として、例えば定時制高校や通信制高校への編入が挙げられます。これらの学校は全日制高校よりも学び方や、通学時間の自由度が高いので、子どものペースに合わせてゆっくり勉強や通学を再開できるでしょう。
定時制高校や通信制高校では、全日制高校と同様に高校の卒業資格が取得できます。「子どもに無理はさせたくないけれど、将来のためにせめて高卒資格は取得させたい」と考える方には、おすすめの選択肢です。
不登校の高校生には「高卒認定」の取得も選択肢のひとつ
子どもが不登校になった場合は、「高卒認定」の取得を促すのも選択肢のひとつです。
高卒認定とは「高等学校卒業程度認定試験」の略称であり、高等学校の卒業者と同程度の学力があることを証明する資格です。不登校により高校の卒業がかなわなかった生徒でも、高卒認定に合格することで大学や短大、専門学校の受験資格を得られます。また、就職や転職活動時のハンデも軽減できるので、将来を切り開くための選択肢として非常におすすめです。
以下のページでは、高卒認定の取得におすすめの予備校を紹介しています。サポート体制や学習環境など、予備校選びの際に判断材料となるポイントをチャート形式でまとめているので、お子様が高卒認定の取得を検討される際にはぜひチェックしてください。
まとめ
今回は、子どもが不登校になった場合に考えられる将来への影響や、親が取るべき対処法などを中心に解説しました。
不登校になる高校生は、毎年約50人に1人の割合で存在します。学校生活や人間関係、家庭環境に起因する問題など、不登校になる原因は個人によってさまざまであり、問題を解決するためには周囲のサポートが必要不可欠です。
傷つきやすく悩みやすいことは、思春期の高校生にある特徴とも言えるでしょう。子どもが不登校になってしまった際には、本記事を参考に「お子様に寄り添ったサポート」を意識してみてください。
また、通学の再開が難しい場合は高卒認定の取得を目指してみるのもおすすめです。以下のページでは、高卒認定の試験対策に最適な予備校をセレクトして紹介しています。
「たとえ高校を中退しても、大学には進学させたい」、「就職や転職活動でハンデを背負わせたくない」と考える保護者の方は、ぜひお子様と一緒に高卒認定へのチャレンジを検討してください。