高校中退するとどうなる?デメリットや進学・その後の選択肢への影響
いじめや人間関係のトラブル・学力不振などを理由に「高校を辞めたい」と考える生徒は少なくないでしょう。しかし、高校を中退した経歴は自身の将来に大きく影響を与えます。一時の感情で将来を無駄にしたくないと考え、つらい現状を我慢し続ける方もいるのではないでしょうか。
そこで今回は、高校中退による具体的なデメリットや進学・就職への影響、中退後のおすすめの選択肢などを解説します。高校の中退は必ずしも進学や就職に不利になる訳ではないので、本記事を参考に今後の進路を前向きに検討してみましょう。
高校の中退率はどれくらい?
実際にどのくらいの方が高校を中退しているのか、まずは直近の傾向を把握しましょう。
文部科学省が発表したデータによると、2022年度における高校中退者の数は43,401人です。これは、全在籍者の中で1.4%を占める割合となります。
数字を見て実感が湧かない方も多いでしょうが、40,000人という人数は例えば高知県宿毛市や岐阜県美濃市・徳島県美馬市などの人口と同じ規模です。つまり、小〜中規模の市町村人口と同じ人数の生徒が、1年間で高校を中退していることになります。
また、直近3年間の高校中退者の数は以下の表のとおりです。
対象年度 | 高校を中退した人数 | 在籍者に占める割合 |
2020年度 | 34,965人 | 1.1% |
2021年度 | 38,928人 | 1.2% |
2022年度 | 43,401人 | 1.4% |
参考:文部科学省 令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
人数自体は増えていますが、全在籍者に占める割合はほぼ横ばいであることが分かります。
高校中退に多い理由とは?
文部科学省の調査によると、高校中退の主な理由と人数は以下のとおりです。
中退に至った理由 | 人数 | 在籍者に占める割合 |
学業不振 | 2,600人 | 6.0% |
学校生活・学業不適応 | 14,253人 | 32.8% |
進路変更 | 19,055人 | 43.9% |
病気・けが・死亡 | 2,107人 | 4.9% |
経済的理由 | 617人 | 1.4% |
家庭の事情 | 1,424人 | 3.3% |
問題行動等 | 1,196人 | 2.8% |
その他の理由 | 2,149人 | 5.0% |
参考:文部科学省 令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
高校の中退理由として、最も多かったのが「進路変更」の19,055人でした。次いで「学校生活・学業不適応」が14,253人となっており、この2つで全体の約8割を占めています。
また、同調査では進路変更を理由に高校を中退した方のうち、半分以上が別の高校への入学を希望していることが分かりました。残りの半分の方は専修学校・各種学校への入学や就職・高卒認定試験の取得など、全日制高校に通う以外の選択肢を選んでいます。
高校を中退する3つのデメリット
高校を中退するデメリットとして、主に以下の3つが挙げられます。
- ・大学進学が困難となる
- ・就職・転職時の選択肢が狭まる
- ・ひきこもりになってしまうリスクがある
それぞれ詳しく解説します。
大学進学が困難となる
高校を中退したまま他の高校にも編入しないと最終学歴が「中卒」となり、大学への進学が困難となります。この点は、高校を中退する大きなデメリットです。
大学を受験するためには「高等学校を卒業・あるいは卒業の見込みがあること」または「高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)を取得していること」のいずれかの条件を満たす必要があります。
つまり高校を中退した方は、別の高校に入学して高卒資格を取得するか、高卒認定試験に合格して高卒認定の資格を取得しなければ、大学に進学できません。
高校を中退したからと言って大学進学への道が閉ざされる訳ではありませんが、ルートが少し複雑になることを理解しておきましょう。
就職時の選択肢が狭まる
高校を中退してそのまま就職を目指すと、仕事の選択肢が狭まります。
厚生労働省が実施した調査によると、2022年3月卒生を対象としたハローワークの求人数は、学歴によって大きな差があることが分かりました。詳細は以下のとおりです。
最終学歴 | 求人数 |
中卒 | 1,102件 |
高卒 | 388,588件 |
参考:厚生労働省 令和5年度「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職状況」取りまとめ(7月末現在)
上の表から、ほとんどの求人が応募資格を「高卒以上」に設定していることが分かります。高校を中退しようか悩んでいる方は、就職時に応募できる求人が少なくなる点を十分理解しておきましょう。
ひきこもりになってしまうリスクがある
高校を中退して社会とのつながりを失うことで、引きこもりになってしまうリスクがあります。一度引きこもりになってしまうと、新たな人間関係の形成に恐怖を覚えてしまい、社会活動を再開できなくなる方も少なくありません。
特にいじめや人間関係のトラブルが原因で高校を中退した方は、他の学校への編入や就職に強く不安を感じる傾向があります。このような方がいきなり全日制の高校に再入学するのは簡単ではありません。
週1回などのペースで無理なく通える通信制高校やサポート校などの選択肢もあるので、まずはどのような選択肢があるのかを知り、そのうえで自分に合った選択肢を見つけましょう。
「高校を中退してよかった」と感じる方も半数以上いる
ここまでデメリットを紹介してきましたが、高校の中退は悪いことばかりではありません。実際に高校を中退した方の中には、「中退してよかった」と感じる方も数多く存在します。
少し古いデータですが、2009年に内閣府から発表された「高校生活及び中学校生活に関するアンケート調査」の結果を見てみましょう。2004年度に高校を中退した方約1,600人を対象に、高校をやめたことについて現在の気持ちをヒアリングしたところ、以下のような結果が得られました。
回答 | 割合 |
やめてよかった | 36.9% |
まあ、やめてよかった | 20.8% |
まあ、やめなければよかった | 22.0% |
やめなければよかった | 19.0% |
参考:内閣府 高校生活及び中学校生活に関するアンケート調査(高等学校中途退学者及び中学校不登校生徒の緊急調査)【概要】
中退後に「やめてよかった」「まあ、やめてよかった」と感じている方は、全体の57.7%を占めています。いくつかのデメリットがある中、半分以上の方が数年後に「高校を中退してよかった」と感じている事実は、中退に不安を感じる方にとって安心材料となるでしょう。
高校中退後のおすすめの選択肢5つ
高校中退後のおすすめの選択肢として、以下の5つを紹介します。
- ・別の高校へ編入する
- ・定時制高校へ入学する
- ・通信制高校へ入学する
- ・就職する
- ・高卒認定の資格を取得する
進むべき道を悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
別の高校へ編入する
高校中退後の進路で最も多いのが、別の高校への編入です。2022年度に文部科学省が実施した調査では、高校を中退した方の4人にひとりが別の高校への入学を希望していたことが分かっています。
別の高校への編入後に卒業まで通学できれば、高校卒業資格を取得でき、大学への進学が可能となります。最終学歴も「高卒」以上となるので、就職や転職・キャリアアップにおいてハンデを背負う心配もありません。
環境を変えることで中退の原因を解決できる場合には、おすすめの選択肢といえるでしょう。
参考:文部科学省 令和4年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果
定時制高校へ入学する
高校中退後のおすすめの選択肢として、定時制高校への進学が挙げられます。
定時制高校は、全日制高校と違って学ぶ時間が選べる学校です。必ずしも朝早くから登校する必要はなく、お昼や夕方・夜間など遅めの時間から通学できます。また、1日の授業時間が約4時間程度と短い点も定時制高校ならではの特徴です。
毎朝の通学を苦痛に感じる方や、アルバイトで学費を稼ぎながら学校に通いたい方には、おすすめの選択肢と言えるでしょう。ただし、定時制高校は卒業までに4年間かかるのが一般的で、通常の全日制高校よりも在学期間が長い点には注意が必要です。
通信制高校へ入学する
全日制高校が合わず中退した方には、通信制高校への入学もおすすめの選択肢です。
通信制高校とは、通信教材を活用した自宅学習がメインの学校です。試験やレポートなどを通じて卒業までに必要な単位を取得することで、全日制高校や定時制高校と同様に高校の卒業資格を取得できます。
年に数回「スクーリング」と呼ばれる日に登校する必要がありますが、それでも通学の負担は大幅に抑えられます。人間関係のトラブルや集団生活に馴染めないなどの理由で高校を中退した方は、選択肢のひとつとして検討してみましょう。
就職する
高校中退後は、他の学校に編入せずそのまま就職する道もあります。最終学歴が「中卒」となるため、高卒以上の学歴を持つ方と比べて応募できる求人は少ないですが、それでも中卒者を歓迎してくれる仕事は一定数存在します。
中卒で仕事に就く方の中には「正社員になるのが難しい」「給料が上がらない」などのイメージを持つ方も多いでしょう。しかし実際には、中卒者の正社員率や平均賃金は、高卒者と比較してそれほど大きな差はないと言われています。中卒だからといって、必ずしも就職やキャリアアップに不利になる訳ではないことは理解しておきましょう。
高卒認定の資格を取得する
高卒認定の取得は、高校中退後の選択肢の幅を広げるおすすめの方法です。
高卒認定とは、正式名称である「高等学校卒業程度認定試験」を略した呼び方です。文部科学省が毎年実施する公的な資格であり、合格により高等学校を卒業した方と同程度の学力があると認められます。
最大のメリットは、大学の受験資格が得られることです。何らかの事情で高校を中退し卒業が叶わなかった方でも、高卒認定の取得が進路を切り開くきっかけとなります。
また、高卒以上を対象とした求人に応募できるようになり、就職や転職にも有利に働きます。高卒認定の試験は満16歳以上であれば誰でも受験できるので、就職後のキャリアアップを目的に取得を目指す方も少なくありません。
高卒認定の試験対策におすすめの予備校3選
予備校に通って高卒認定の取得を目指したい方には、以下3つの予備校をおすすめします。
- ・四谷学院
- ・トライ式高等学院
- ・J-Web School
上記3校は、いずれも高卒認定の試験対策に特化したカリキュラムを提供する予備校です。ひとまず高卒認定の取得のみを目指す方はもちろん、その後の大学受験まで見据える方にも包括的なサポートを提供しています。
学校名 | 学費の目安(年間) | 通学の有無 | 対象キャンパス |
四谷学院 | 800,000円~1,200,000円 | 有 | 高認通学コースは四谷校のみ |
トライ式高等学院 | 650,000円~1,200,000円 | 有 | 公式サイトに記載なし(詳細は直接問い合わせが必要) |
130,000円~ | なし | 通信コースのみ |
学費や通学の有無、対象キャンパスなどの比較を上の表にまとめました。予備校に通って高卒認定の取得を目指したい方は、ぜひ参考にしてください。
また、高卒認定の試験対策に最適な予備校をもっと詳しく知りたい方は、以下のページもチェックしてみましょう。高卒認定の試験対策に強い予備校を、学習環境やサポート体制などの観点からチャート形式で分かりやすく紹介しています。
高校中退に関するよくある質問
最後に、高校の中退に関連した以下のよくある質問を紹介します。
- ・高校を中退する際にはどのような手続きが必要?
- ・高校を中退した経歴は履歴書に正直に書いた方が良い?
同様の疑問を持った方は、ぜひ参考にしてください。
高校を中退する際にはどのような手続きが必要?
高校を中退する際には、以下の手順で手続きする必要があります。
- 1.保護者と担任の先生を交えて三者面談
- 2.退学届の作成・提出
- 3.学費などお金の清算
- 4.私物の片付け・持ち帰り
まずは学校側に退学の意思を伝えたうえで、保護者を交えた三者面談に進みます。話がまとまったら、退学届や退学願などの書類を作成し学校に提出しましょう。記載する退学理由は「一身上の都合」「進路変更」などが一般的です。
続いて、授業料や生徒会費などの金銭面の清算を完了させます。すでに納めた年間の授業料などは返還されないケースも多いので、あらかじめ学校側に確認しておきましょう。また、未払いの学費がある場合は最後に不足分を納入します。
学費の清算を済ませ、学校に置いてある私物や書類などの片付けが完了したら、退学の手続きは完了です。
高校を中退した経歴は履歴書に正直に書いた方が良い?
応募の際に作成する履歴書には、学歴を正直に記載しなければいけません。学歴を偽って採用されても、のちにその事実が発覚した際には内定が取り消しとなる可能性があります。
「正直に書いたら採用してもらえない」と不安に思う方もいるかもしれませんが、最終学歴が中卒でも応募できる求人は毎年一定数存在します。このような求人を選んで応募すれば、中卒という学歴に負い目を感じる必要はありません。履歴書には、高校中退の経歴を堂々と正直に記載しましょう。
まとめ
今回は、高校を中退する方の現状や将来への影響、中退後のおすすめの選択肢などを解説しました。
高校の中退により、大学への進学や就職・転職などに影響を及ぼすことは事実です。しかし一度中退したからといって必ずしもハンデを背負う訳ではなく、他の高校への編入や定時制高校・通信制高校への入学など、中退によるデメリットをカバーできるさまざまな選択肢が存在します。
どうしても現状がつらい方は、環境を変えてみるのもひとつの手段です。本記事を参考に、自身にとって最良の選択肢を検討しましょう。
中退後に大学進学を諦めたくない方や、就職先や転職先の幅を広げたい方には、高卒認定の取得もおすすめです。以下の「高認取得に最適なおすすめ予備校一覧ページ」では、高卒認定の試験対策が充実した予備校を詳しく紹介しているので、ぜひ参考にしてください。