高認の生物の傾向と対策
高認(高等学校卒業程度認定試験)の生物の試験の傾向と対策を紹介します。過去に高認で出題された設問をみながら、「どのように解くのか」と「どのように勉強したらよいのか」を解説します。
高認の生物試験に実際に出題された設問(1)
下の表は、原核細胞、動物細胞、植物細胞に見られる構造の有無をまとめたものである。表中の空欄ア~エに入る記号の正しい組合せを、下の1~6のうちから1つ選んでみましょう。
(+はその構造があることを,-はないことを示す)
細胞の構造 | 原核細胞 | 動物細胞 | 植物細胞 |
細胞膜 | + | + | + |
核 膜 | ア | + | + |
ミトコンドリア | – | + | エ |
葉緑体 | イ | – | + |
細胞壁 | + | ウ | + |
選択肢
ア | イ | ウ | エ | |
1 | – | – | – | + |
2 | – | – | – | – |
3 | – | + | + | + |
4 | – | + | + | – |
5 | + | – | – | – |
6 | + | + | + | + |
正答:1
設問(1)の傾向と対策
「あるか、ないか」の単純な問題ですので、原核細胞と動物細胞と植物細胞について知っている人は確実に回答でき、知らない人はまったく回答できない問題です。
細胞についてはこの表のように「ある(+)」「ない(-)」で覚えていきましょう。
細胞とは、生物の基本的な構成単位です。細胞が組織をつくり、組織が器官をつくり、器官が生物の個体をつくります。ちなみに人は、60兆個の細胞でできています。
その細胞は、さまざまな種類があります。大きな分け方は、「原核細胞か真核細胞か」です。
この2つの違いは、核膜がある細胞核(真核)があるかどうかです。
・原核細胞には「核膜がある細胞核(真核)」がない
・真核細胞には「核膜がある細胞核(真核)」がある
このことから、設問のアには「-(核膜がない)」が入るので、選択肢は1、2、3、4に絞られます。また、原核細胞には葉緑体がありません。したがってイは「-(ない)」を選びます。
真核細胞は動物細胞と植物細胞にわかれ、それぞれの特徴は次のとおりです。
・動物細胞:細胞壁と葉緑体と液胞がない。ミトコンドリアがある。
・植物細胞:細胞壁と葉緑体と液胞がある。ミトコンドリアがある。
・動物細胞と植物細胞の共通点:核、細胞質、細胞膜がある。
植物細胞に葉緑体があるのは、それで光合成を行うためです。動物細胞には葉緑体がないので、それで動物は光合成を行えないのです。
細胞膜は動物細胞にも植物細胞にもありますが、植物細胞は細胞膜の外に細胞壁があります。動物細胞には細胞壁はありません。
植物細胞のほうが、細胞壁がある分、頑丈にできています。動物は骨などの細胞を支えるものがありますが、植物にはそれらがありません。それで植物の細胞は、細胞自体が強化されているのです。
また、動物は激しく動くので、細胞壁のような硬いものが存在すると動きが鈍くなってしまいます。細胞壁がないほうが、動物にとっては合理的なのです。ここから、ウは「-(ない)」であることがわかります。
有機物質からエネルギーを取り出す働きをするミトコンドリアは、動物細胞にも植物細胞にもあります。したがってエは「+(ある)」であることがわかります。
動物細胞は体内の不要物を尿などで排出できますが、植物はできません。そこで植物は細胞のなかの液胞に不要物を蓄えておくのです。液胞はゴミ箱のようなもの、と覚えておいてください。古い植物細胞は、不要物を多く含んだ液胞が大きくなっています。
細胞を学習するときは、植物細胞のほうが複雑なので「植物細胞にしかないもの」を覚えていくとよいでしょう。
この設問では出てきていませんが、核には遺伝子や染色体が入っていることも重要ですので覚えておいてください。
高認の生物試験に実際に出題された設問(2)
図は、ある代謝における物質の変化とエネルギーの流れを模式的に示したものである。図中の空欄オ~クに入る語句の正しい組合せを、下の1~4のうちから一つ選べ。
オ | キ | 生命活動 | ||||
↓ | → | ↓ | ↑ | → | ||
カ | ク |
↓↑は物質の変化を示す
→はエネルギーの流れを示す
選択肢
オ | カ | キ | ク | |
1 | 有機物 | 無機物 | ATP | ADP+リン酸 |
2 | 有機物 | 無機物 | ADP+リン酸 | ATP |
3 | 無機物 | 有機物 | ADP+リン酸 | ATP |
4 | 無機物 | 有機物 | ATP | ADP+リン酸 |
正答:2
設問(2)の傾向と対策
設問の図は、異化(呼吸)を示しています。異化は次のように進みます。
1)有機物を無機物に分解すると、エネルギーが放出される
2)エネルギーが加わると、ADPとリン酸が結合してATPがつくられる。その結果、ATPにエネルギーが蓄えられる
3)エネルギーを持ったATPが分解するとADPとリン酸にわかれ、エネルギーを放出する
4)ATPの分解によって放出したエネルギーが生命活動に使われる
この4項目を踏まえて、設問の図をもう一度みてみましょう。
「オ→カ」は1)から、有機物(オ)から無機物(カ)に変化していることがわかります。このときエネルギーが放出されています。
2)によると、このエネルギーを使ってADPとリン酸が結合してATPがつくれるので、キがADP+リン酸、クがATPになることがわかります。
そして、3)よりATP(ク)がADPとリン酸(キ)にわかれるときにエネルギーが放出されてこれが生命活動に必要なエネルギーになるのです。
まとめ
「生物が最も得意」という人と、「生物は苦手」という人がいます。この差は、教科書通り覚えることが得意な人と苦手な人の差にあるようです。生物の試験では教科書通りに出題されるので、何度も教科書や参考書を読み返して「流れ」をつかんでください。
覚えるときは、教科書を閉じてノートに図を描いてみるとよいでしょう。教科書と同じ図を描くことができたら、暗記できたことになります。