「政治・経済はここまで出る」高卒認定試験の試験範囲
高卒認定試験の「政治・経済」科目の出題範囲をみていきましょう。政治と経済と聞くと、それだけで「難しそう」と感じるかもしれませんが、逆にそれが狙いどころです。実社会における政治と経済はとても難しい分野なので、かえって中学生や高校生には基礎しか教えないのです。したがって、高卒認定試験の政治・経済は、数学や英語より勉強の効果が出やすい教科といえます。
大体このようなことが問われます
高卒認定試験の政治・経済の出題範囲は、高校の政治・経済の教科書に書かれてある内容のすべてとなります。その内容は次のとおりです。
・第1章 現代の政治
民主政治の成立や基本的人権の確立
日本国憲法の基本原理
日本の政治機構、国会と立法、内閣と行政、裁判所と司法など
・第2章 現代の経済
現代の資本主義経済
経済主体と経済の循環、生産のしくみと企業
福祉社会と日本経済の課題
国際経済体制の発展
・第3章 現代社会の諸課題
少子高齢社会、地域社会、若者の労働環境
このとおり「難しい問題」ばかりを扱っています。いずれのテーマも、本気で研究しようとすれば、1項目だけで分厚い解説本が必要になります。したがって、高卒認定試験では、各項目について深く掘り下げることはありません。試験には「さわり」しか出題されません。
過去問をみてみよう
それでは過去に出題された、高卒認定試験の政治・経済の問題をみていきましょう。
次の文章を読んで、以下の問いに答えよ。
・日本国憲法の第 11 条には「国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる」と規定されている。
・問い:下線部分「侵すことのできない永久の権利」に関連して、次の生徒のレポート中のA、B、Cにあてはまる語句の組合せとして適切なものを、下の1~4のうちから一つ選べ。
生徒のレポート ・人間は生まれながらにして自由かつ平等な権利をもっているとされる。これは 17 世紀から 18 世紀にヨーロッパやアメリカで起こった【A】や、イギリスのホッブズやロック、フランスのルソーに代表される社会契約説がもとになっている。特にロックは『統治二論(市民政府二論)』の中で、政府は人民の権利をまもるために存在しているため人民の【B】を侵害した場合には【C】を行使できるとした。
ABC 1:A市民運動、B自然権、C抵抗権 2:A市民革命、B抵抗権、C自然権 3:A市民革命、B自然権、C抵抗権 4:A市民運動、B抵抗権、C自然権
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答えは3です。なぜ3を選択すべきなのか解説します。
この問題では次の2項目について問われています。
・18世紀にヨーロッパとアメリカで起きたことは、市民運動か市民革命か
・自然権とは何か、抵抗権とは何か
市民運動は、きわめて現代的な活動です。現代は21世紀(西暦2001~2100年)ですので、市民運動は18世紀(西暦1701~1800年)のような昔の活動ではありません。一方の市民革命は、市民運動をはるかに上回る激しい活動で、命を落とすことも珍しくありません。市民運動は18世紀の混沌(こんとん)とした世界で起きました。
自然権とは、法律が存在する以前に人間が持っている権利のことで、その内容は「個人は生きるために必要な力を行使してよい」となっています。生徒のレポートのなかにある「人民の権利」に近い概念です。そして、政府が自然権を侵害した場合、人々は抵抗する権利を行使することが許されます。
この問題は、市民運動、市民革命、自然権、抵抗権について、「教科書に載っていることだけ」を覚えておけば解くことができます。
まとめ
高卒認定試験の政治・経済の勉強では、基礎と基本を身につけてください。難しい問題集を解くより、教科書を2度、3度と読み返したほうがよいでしょう。「難しい問題は出ない」「教科書に書いてあることしか出ない」ということを信じて、勉強に取り組んでみてください。