高校中退と引きこもりの関係とは?家庭でできる対処法と進路支援

高校中退や引きこもり(6ヵ月以上家庭に閉じこもり、社会に参加していない状態)は、今や特別なケースではなく、誰にでも起こり得る問題です。
高校中退をきっかけに引きこもり状態になる若者が多く、防止・改善するには家庭や周囲のサポートが重要になります。
本記事では、高校中退と引きこもりの関係や家庭でできる対処法、進路支援の選択肢について詳しく解説します。これらの問題で悩んでいる人やその家族は、新たな一歩を踏み出すきっかけにしてください。
高校中退と引きこもりの関係

高校を中退した若者のなかには、そのあとに引きこもりに陥ってしまう人もいます。また、もともと引きこもりがちだったことで、高校を中退せざるを得なくなるケースもあります。
まずは、高校中退と引きこもりの間にある深い関連性や、その背景となる要因について見ていきましょう。
高校中退と引きこもりには強い関連性がある
高校中退と引きこもりには強い関連性があることが、さまざまな調査や事例からも明らかになっています。不登校状態が続くなかで、学校や社会とのつながりを失い、最終的に高校を中退するという流れが典型的です(不登校→引きこもり→高校中退)。
一方で、何らかの理由で高校を中退したあと、心の準備が整わないまま社会に出ることができず、そのまま引きこもりにつながる場合も多く見られます(不登校→高校中退→引きこもり)。
文部科学省が発表した令和5年度「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」によると、高校における不登校生徒数は68,770人に上り、不登校生徒の割合は全体の2.4%に達しています。
さらに、この不登校生徒のうち11,746人、つまり17.1%が中退に至ったという結果が出ています。このデータは、高校中退と不登校・引きこもりの関連の深さを示す重要な数字といえるでしょう。
引用:文部科学省「児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果(令和5年度)」
引きこもりや中退に至るおもなきっかけとは
高校中退や引きこもりに至る背景には、さまざまな要因が潜んでいます。在学中には、以下が要因として挙げられます。
・人間関係のトラブル
・学業不振
・進路に対する不安
・心の不調
特に思春期は心が不安定になりやすく、小さなきっかけが大きな悩みに発展することも少なくありません。
一方で、中退後に引きこもりやすくなる要因として、以下が挙げられます。
・就職や進学に失敗して自信を失う
・生活リズムが乱れ、昼夜逆転が常態化する
・周囲との接触機会が減り、社会的に孤立してしまう
これらの状況が重なることで、外に出る勇気が持てなくなります。
なぜ高校中退後は引きこもりやすいのか
高校を中退することは、それまでの「所属先」や「居場所」を失うことに匹敵します。この突然の孤立が、社会との接点を断たれたような感覚を生み、引きこもりの原因となることが少なくありません。
特に周囲の目や評価を気にするあまり、「外に出るのが怖い」「人と会うのが不安」という心理状態に陥るケースがあります。
また、高校を中退したことで「自分は失敗したのではないか」という強い自己否定感に苦しむ方もいます。この気持ちは、就職や進学の選択肢が狭まった現実と相まって、将来への不安をさらに増幅させるのです。
その結果、ますます引きこもりがちになり、負の連鎖から抜け出せなくなってしまうケースが多く見られます。
高校中退や引きこもりを防ぐために家庭でできるサポート

高校中退や引きこもりを防ぐには、家庭でのサポートが重要になります。ここからは、親子の信頼関係や日常の過ごし方、外部のサポートの活用など、家庭でできる具体的な対策を見ていきましょう。
話しやすい環境を作る
最も大切なのは、子どもと信頼関係を築き、気兼ねなく何でも話せる環境を作ることです。子どもは、親や大人に責められると心を閉ざしやすくなります。そのため、まずは子どもの言葉にしっかり耳を傾け、「傾聴」の姿勢を持つことが大切です。
どんなに些細な内容でも、子どもが話したことを真摯に受け止め、共感を示すのが信頼関係の土台となります。
また、子どもが否定的な発言をしたときも、すぐに反論したり説得しようとしたりするのではなく、一度受け止めるようにしましょう。子どもにとって親が「安心できる相談相手」であることが、心の安定や自信の回復につながります。
生活のリズムを整える
生活リズムの乱れは、引きこもりの大きな要因です。昼夜が逆転した生活を過ごしていると、学校や社会との接点が薄れてしまいます。その結果、外に出るきっかけを失ってしまいます。
このような状態に陥らないためにも、生活リズムを整える取り組みを行うようにしましょう。具体的には、以下が挙げられます。
・朝決まった時間に顔を洗う
・家族と一緒に朝食をとる
・短時間でも外の空気を吸う
こうした習慣が、子どもの心身の健康や、社会との接点を取り戻すきっかけになります。
SNSやインターネット環境との付き合い方を見直す
SNSやインターネットは利便性が高い一方で、使い方を間違えると引きこもりを助長してしまうリスクもあります。特に、オンラインでのつながりだけに安心を求めるようになると、リアルな人間関係を築く機会が減り、孤立感を深めてしまいます。
家庭では、SNSやインターネットの使い方について親子で話し合い、ルールを決めておくことが大切です。例えば、「夜遅くまでスマートフォンを使わない」「食事中はスマートフォンを置く」といった簡単なルールからはじめましょう。
専門家と相談する
家庭だけで問題を解決しようと、無理をする必要はありません。親だけでは改善が難しいと感じた場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。
まずは学校の担任の先生や、スクールカウンセラーに相談しましょう。学校内での支援や対応策を一緒に考えてくれます。
もし学校の支援だけでは十分でないと感じた場合は、民間の支援団体やNPO、フリースクールなどの機関に相談してみましょう。各地域には「ひきこもり地域支援センター」や相談窓口もあります。こういった機関に相談するのも有効です。
転入や編入を検討する
学校に通うことが難しい場合は、転入や編入を検討するのも一つの選択肢です。
全日制高校への転入・編入は、学力試験や定員の関係で難しいケースもありますが、定時制高校や通信制高校であれば、比較的柔軟に受け入れてもらえる傾向にあります。子どもに適した新しい環境を探すことは、再び学ぶ意欲を取り戻すきっかけになるでしょう。
転入・編入に関する情報は、教育委員会や学校の相談窓口で確認することをおすすめします。
すでに高校を中退してしまった場合の進路や支援策

高校を中退したからといって、そのあとの進路が完全に閉ざされるわけではありません。新しい道を探すことが大切です。次に、高校中退後に考えられる進路や支援の選択肢について紹介します。
引きこもり支援団体や居場所
引きこもりを改善するには、「安心できる居場所」を見つけることが重要です。
全国の自治体には「ひきこもり地域支援センター」が設置されており、引きこもりに特化した相談や支援を受けられます。こうした窓口では、個別相談だけでなく、家族向けの支援や居場所づくりの情報も提供しています。まずは、こうした機関に気軽に相談してみましょう。
通信制高校への再入学(編入・転入)
引きこもり状態が落ち着き、再び学びたい気持ちが芽生えた場合は、通信制高校への再入学(編入・転入)を検討してみましょう。通信制高校は自宅での学習が中心で、毎日通学する必要がないため、通学に不安がある方にとって安心できる選択肢です。
なかには、引きこもりや不登校の経験がある生徒を積極的に受け入れ、手厚いサポートを行っている通信制高校もあります。自分のペースで勉強して、高校卒業を目指せる点も大きな魅力です。
定時制高校への再入学(編入・転入)
もし「夜間なら通学できそう」「人と直接交流しながら学びたい」という思いがあれば、定時制高校への再入学(編入・転入)も選択肢の一つです。
定時制高校には、引きこもり経験がある方や、家庭の事情で高校を中退した方、社会人経験のある方など、さまざまな事情を抱える生徒が在籍しています。
そのため、同じような立場の方と出会える安心感があります。夜間に学びながら自分のペースで勉強を進められるのも、定時制高校の大きな特徴です。
高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)
高校に再び通わなくても、大学や専門学校への進学を目指せる方法として「高卒認定試験の受験」があります。高卒認定試験に合格すれば、高校卒業と同等の学力があると認められ、大学受験資格を得られます。
独学での合格を目指す方もいますが、高卒認定試験に特化した予備校や塾に通えば、効率的な学習を進めることが可能です。「できるだけ早く大学を目指したい」「自宅学習で資格を取得したい」と考える方には、有力な選択肢となります。
試験は年に2回実施されており、一度に全科目に合格する必要はありません。各科目は独立して合否判定され、合格した科目は次回の試験で免除されるため、自分のペースで着実に合格を目指すことが可能です。
就職支援や職業訓練
「社会に出たい」と感じている場合は、若者向けの就職支援や職業訓練の活用を検討しましょう。
全国各地にある「地域若者サポートステーション」や「ジョブカフェ」では、就職に向けた相談、職業訓練、インターンシップの紹介など、幅広い支援を無料で受けられます。
さらに、ハローワークでも就職の相談が可能です。「働くことが不安」という方でも相談できるので、ぜひ活用してみてください。
まとめ

高校中退と引きこもりは密接に関係しており、家庭での適切なサポートが将来の道を切り開く鍵となります。中退後も進学の道は閉ざされておらず、高卒認定試験の合格を目指すことで、大学や専門学校への進学が可能です。
効率的に合格を目指すには、高卒認定試験に特化した塾や予備校へ通うのがおすすめです。専門的な指導やサポート体制が、合格への道のりをあと押ししてくれます。次の一歩を踏み出すためにも、通うことを検討してみてください。