高卒認定は「意味ない」といわれる理由や取得するメリットとは?
高校を中退したり、進学しなかったりした方にとって、「このままでは将来が不安」と感じることは自然なことです。そのような方にとって、高等学校卒業程度認定試験(高卒認定)は、次のステップへ進むための重要な手段となります。
しかし、インターネット上では「高卒認定は意味ない」といったネガティブな情報も見られ、受験するか迷っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、そうした「高卒認定は意味がない」といわれる理由を整理したうえで、メリットを紹介します。高卒認定の実際の役割を正しく理解し、自分にとって本当に必要かどうかを判断する参考にしてください。
高卒認定は「意味ない」といわれる理由
高卒認定は、高校を卒業していない方が大学受験資格などを得るための重要な制度です。しかし、一部で「意味がない」といわれることもあり、その背景には学歴上の扱いや進路選択の制限に関する誤解があります。
ここでは、高卒認定が「意味ない」といわれる理由について見ていきましょう。
最終学歴が「高卒」にならない
高卒認定に合格しても、高校を卒業したことにはならないため、最終学歴は「中卒(中学校卒業)」のままです。
そのため、学歴コンプレックスを抱える方にとって、高卒認定を取得するだけでは「高卒」というステータスは得られず、コンプレックスが解消されないと感じる場合があります。
履歴書の学歴欄には「〇〇高等学校卒業」とは記載できず、資格欄に「高等学校卒業程度認定試験 合格」と記載することになります。
一部の企業や採用で不利になる可能性がある
多くの企業では、高卒認定合格者を「高卒と同等」として扱いますが、採用の場面で不利になる可能性がまったくないわけではありません。
企業によっては、求人要件を「高校卒業」と明確に定めている場合があり、高卒認定合格者では応募できないケースも一部存在します。
特に、採用担当者が高卒認定制度を十分に理解していない場合、「高校を途中で辞めた人」というようなネガティブな印象を持たれる可能性があります。
就職の面接においては、高校を卒業しなかった理由や、なぜ高卒認定を取得したのかを質問されることが多いため、前向きな姿勢で説明するようにしましょう。
大学受験における推薦入試の制限がある
高卒認定合格者は、大学受験の進路選択において一部制限を受けます。
大学に進学する場合、高校の学校長の推薦が必要な指定校推薦入試や公募推薦入試の一部は受けられません。
ただし、受験資格に「高卒認定合格者を含む」と明記されている自己推薦入試や、総合型選抜(旧AO入試)、高卒認定合格者を対象とする推薦枠がある場合は受験が可能です。
ネガティブな意見が多い
高卒認定試験は、高校の教科書の基礎的な内容から出題されるため、短期間で合格する方もいます。こうした事情から、「簡単すぎる」「努力しなくても取得できる」という印象を一部の方に持たれやすい側面があります。
しかし、高卒認定はあくまで大学受験資格を得るための制度であり、難関大学の一般入試で求められる学力とは別物です。高卒認定に合格しただけでは、入試レベルとの間に大きなギャップが残りやすいため、大学受験を目指す場合はあらためて本格的な受験勉強が必要となります。
高卒認定試験対策が必要になる
高卒認定は基礎的な内容とはいえ、8~9科目すべてに合格する必要があり、対策なしで突破するのは簡単ではありません。特に、高校で履修していない科目や苦手な科目を自力で補うのは簡単ではありません。
独学の場合は、計画的に8~9科目の学習を進める必要があり、学習習慣の定着やモチベーションの維持が難しくなることがあります。また、試験範囲が広いため、学習の優先順位や進め方を判断しづらい点も、独学で挑戦する際の大きな障壁になります。
高卒認定を取得するメリット
高卒認定を取得しても、最終学歴は「高卒」になりません。しかし、デメリットを踏まえても将来の可能性を広げられる大きな価値があります。高卒認定は、大学受験資格を得られるだけでなく、進学や就職の選択肢を増やすための重要な一歩となります。
以下で紹介するメリットを踏まえて、正しい選択を行うようにしましょう。
大学・短大・専門学校への受験資格を得られる
高卒認定を取得する最大のメリットは、高校卒業者と同じように大学・短期大学・専門学校の受験資格を得られることです。高卒認定に合格すれば、高校を卒業していなくても進学することができます。
進学の選択肢が確保されることは、今後のキャリア形成において大きな意味を持ちます。受験資格を得ることで、高校中退によって進路が限定される状況を解消し、次のステップへ向けた準備をすぐにはじめられるようになるでしょう。
さらに、大学へ進学・卒業すれば最終学歴は「大卒」となり、高卒認定にともなう「中卒扱い」というデメリットは事実上なくなります。難関大学への進学を実現できれば、就職面での評価が高まるだけでなく、学歴に対する不安が解消されるでしょう。
国家試験や公務員試験の受験資格を得られる
多くの国家資格や公務員試験は、「高卒以上」を受験資格の要件としています。
高卒認定を取得すると、これらの資格や試験の受験資格を満たし、将来の選択肢やキャリアパスが広がります。高卒認定を取得することで、学歴によるキャリアの制約がなくなり、専門職や安定した公務員としての道が開けます。
例えば、公務員試験(高卒程度)や宅地建物取引士(宅建)、社会保険労務士などの国家資格の受験が可能です。これにより、高校を卒業していなくても、自分の努力次第でキャリアの幅を大きく広げられます。
就職の選択肢が拡大する
高卒認定を取得すると、就職活動で応募できる求人の幅が広がります。応募条件が「高卒以上」とされている求人にもエントリーできるようになり、採用基準を満たしやすくなるため、給与や待遇面でより有利な仕事を選びやすくなります。
「中卒」と比較すると、高卒認定合格者を対象とした求人は多いため、安定した雇用を得たい場合や将来的なキャリアアップを目指す場合にも有利に働きます。
また、面接で「高校を辞めた理由」を聞かれたとしても、「そのあとの努力で高卒認定を取得した」という事実は強いアピール材料になります。成長意欲や課題克服力を示せるため、企業側に前向きな印象を与えやすくなります。
高卒認定の取得は、困難を乗り越えて目標を達成できる能力を示す証拠にもなり、自信を持って就職活動に臨むための大きな支えとなるでしょう。
高卒認定の取得には「塾や予備校」が役立つ?
高卒認定は独学でも取得できますが、合格の確実性や学習効率を重視するのであれば、塾や予備校の活用もおすすめです。独学で生じやすい「モチベーション維持の難しさ」や「学習計画の迷い」を解消し、合格までのプロセスを着実に進められるようにサポートします。
合格に必要なポイントだけを学べる
独学では試験範囲が広く、どこから学習をはじめればよいのか迷ってしまいがちです。塾や予備校では、試験傾向を熟知した講師が合格までの最短ルートを示すため、必要なポイントに絞った効率的な学習を行えます。
特に、高卒認定試験で出題されやすい重要な箇所や、確実に点数をとれる基礎的な分野に集中して取り組めるのが大きなメリットです。
また、わからない点はすぐに講師に質問できるため、疑問点を残さずに学習を進められます。独学でつまずきやすいポイントを早期に解消できることは、学習継続にもつながるでしょう。
塾や予備校を活用することで、独学で挫折しやすいリスクを軽減でき、結果として合格率が高まる傾向があります。無駄のない学習ができ、モチベーションを保ったまま合格まで到達しやすくなる点も大きなメリットです。
合格までの学習計画を立ててもらえる
高卒認定試験は科目数が多く、計画を立てずに進めると試験日までに学習が追いつかなくなる可能性があります。
塾や予備校では、講師が合格までの学習計画を立ててくれるため、何をいつまでに進めればよいのかが明確になります。自分で計画を作る負担がなく、迷いなく学習をはじめられる点は大きなメリットです。
さらに、現在の学力や目標、免除科目などに合わせて個別のカリキュラムを組んでもらえるため、効率的かつ無駄のない学習を行えます。限られた時間を有効に使えるだけでなく、学習が順調に進むことでモチベーションの維持にもつながり、挫折のリスクを抑えられます。
挫折しにくい環境で学習できる
独学の大きな課題は、「孤独」と「モチベーションの低下」です。
塾や予備校に通うことで、講師やクラスメイトとのかかわりが生まれ、孤独を感じにくくなります。同じ目標を持つ仲間がいる環境は、励まし合いや切磋琢磨を生み、途中で諦めにくくなる大きな支えとなります。
また、自己管理が苦手な場合でも、定期的な授業や進捗確認といった外部からの働きかけにより、学習のペースを保ちやすくなるでしょう。プロの講師が精神的なサポートも行い、スランプに陥った際の早期の立て直しが図れます。
高卒認定に関するよくある質問
最後に、高卒認定に関して、受験を検討している方がよく抱く質問を紹介します。
高卒認定はいつ実施される?
高卒認定試験は年に2回実施されており、おもに8月と11月に実施されます。
出願期間は、試験の約3~4ヵ月前からはじまり、期間はおよそ1ヵ月半です。例えば、8月実施の試験であれば、通常4月下旬~5月上旬頃が出願期間です。
この期間を逃すと次の試験まで待つことになるため、受験を検討している方は文部科学省のWebサイトで最新の実施要項と出願期間を必ず確認しましょう。
高卒認定はどこで実施されている?
高卒認定試験は、全国の各都道府県に設置される会場で実施されており、基本的に各都道府県に1ヵ所ずつ確保されています。
大きな特徴は、本籍地や現住所に関係なく、受験者が希望する試験地を選べる点です。例えば、現在生活している地域の会場を選んだり、実家の近くで受験したりと、状況に合わせて柔軟に試験地を選択できます。
ただし、試験会場は文部科学省が指定するため、事前に必ず確認しておきましょう。また、出願時に選択した試験地は、原則として変更できない点にも注意が必要です。
まとめ
高卒認定は「意味がない」どころか、未来の可能性を大きく広げるための重要な資格です。合格しても進学・卒業しなければ、最終学歴は「中卒」のままというデメリットはありますが、それを上回るメリットを得られます。
独学での合格に不安がある方や、最短で確実に合格したい方は、塾や予備校の利用を検討しましょう。高卒認定は、自分の意志で未来を切り開くための大きな一歩です。将来に向けた確かな「投資」として、前向きに挑戦してみてはいかがでしょうか。
