「倫理はここまで出る」高卒認定試験の試験範囲
高卒認定試験で倫理を選択しない人は意外に多いようです。「倫理」はあまり聞き慣れない言葉なので、直感的に「難しそう」「回避しよう」と思ってしまうからでしょう。
確かに倫理は簡単な学問ではありません。しかし、それだけに、基礎知識を問う高卒認定試験では、やさしい内容しか出題されません。したがって、倫理は、勉強すれば確実に点数をあげることができる科目なのです。「狙い目」の科目である倫理の試験範囲を紹介します。
大体このようなことが問われます
高卒認定試験の倫理では、次のような事柄が問われます。
<中国の思想>
中国の思想では、例えば春秋・戦国時代(紀元前8~紀元前3世紀)の思想を学びます。そのなかに、孔子(こうし)という人が唱えた「仁(じん)」という考え方があります。仁は、人が正しく生きるために持っておくべき素養、と言い換えることができます。
仁は「孝悌(こうてい)」「克己(こっき)」「恕(じょ)」「忠(ちゅう)」「信(しん)」で構成されます。孝悌とは、子が親に尽くしたり、弟子が先生に尽くしたりすることをいいます。
克己とは、私利私欲を抑制することをいいます。恕とは他人を思いやること、忠は自分の心に素直になること、信は人をあざむかないことです。
「思想」とは、昔の偉人(いじん、偉い人のこと)の考え方であり、倫理の試験では思想が頻繁に出題されます。
<現代の思想>
現代の思想では、例えば、「実存主義」について学びます。
実存主義は、19世紀のヨーロッパで誕生した思想で、次のような内容になっています。
・生きる道を自分で切り開く
・今ここにあるひとりの人間の現実、つまり実存を考える
・実存としての自分のあり方を探求する
なぜ、「実存としての自分」を考えなければならないのでしょうか。それは、実存主義が生まれる前は、社会のなかで画一化していく自分や平均化していく自分が問題になっていたからです。画一化した自分や平均化した自分は主体性のない自分であり、その状態は自分を喪失しています。それで哲学者たちは、自分を取り戻すために実存を考えようと提唱したのです。その哲学者のなかには、キルケゴール、ニーチェ、ハイデガー、サルトルなどがいます。
その他、高卒認定試験の倫理の試験では<ギリシャ思想><キリスト教><日本の風土と伝統思想><江戸時代~近現代の日本思想><人間の尊厳><自然・科学技術と人間><社会契約説>などが問われます。
過去問をみてみよう
それでは実際の高卒認定試験で出題された倫理の試験問題をみてみましょう。
【問い】 日本の出生数と出生率の推移の表から、もっとも適切なものを、下の1~4のうちから一つ選べ。
表:出生数と合計特殊出生率の推移(1975年から5年ごと、2000年からは毎年の推移)
厚生労働省「平成 27 年(2015)人口動態統計(確定数)の概況」により作成 1:日本はこの 40 年間で、出生数が約 3 分の 2 に減少している 2:日本はこの 40 年間で、出生数が前回調査年より増加した年はない 3:合計特殊出生率がもっとも低くなっている年は、出生数も同様に最低となっている 4:合計特殊出生率が前回調査年より上昇しているのに、出生数が減少している年がある |
【正答】は4です。なぜ4が適切な内容であり、他の選択肢1、2、3は適切な内容ではないのか解説します。
選択肢1の「40年間」とは、1975年から2015年までの40年間のことをいっています。1975年の出生数は1,901,440で、その3分の2は1,267,627なので、2015年の1,005,677とはかけ離れています。したがって選択肢1は適切でないことがわかります。
選択肢2については、例えば、2007年の1,089,818から2008年の1,091,156へと増えているので、これも適切ではありません。選択肢3についてですが、合計特殊出生率の最低年は1.26の2005年で、出生数の最低年は1,003,539の2014年でした。違う年なので、これも適切ではありません。
選択肢4は、1980年と1985年の比較では、合計特殊出生率は1.75→1.76へと上昇しているのに、出生数は1,576,889→1,431,577へと減少しています。したがって、適切であることがわかります。
まとめ
倫理は人の生き方に深く関わる学問です。倫理を意識的に勉強したことがない人でも、親や教師や職場の上司などから教わる生き方には、倫理の考え方が含まれています。そうしたことから、倫理の勉強は「わかる」ことが多いと思います。わかってしまえば、あとは必要な事項を暗記するだけなので、倫理は勉強の効率がよい教科といえます。