中卒から公認会計士になれる?夢を実現させるための具体的な方法
会計監査の専門家である公認会計士は、難関国家資格の1つとして知られています。社会的ステータスが高く、高収入も期待できる魅力的な職業ですが、「中卒から公認会計士になれるのか?」と疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。もし可能であれば、夢が大きく広がります。
この記事では、中卒から公認会計士になるための方法を解説します。資格取得に向けた具体的なステップを詳しく紹介するため、公認会計士を目指す人はぜひ参考にしてください。
中卒から公認会計士になれる?
公認会計士になるのは難しいイメージがありますが、ここでは、中卒から公認会計士になれるかを解説します。
公認会計士試験の受験資格
日本における公認会計士試験には、学歴要件が定められていません。中卒や高卒の人でも試験を受験でき、合格すれば公認会計士としての資格を取得できます。
2005年以前の旧公認会計士試験制度では、「大学卒業または同等以上の学力を有する者」という受験資格が定められており、中卒や高卒の人は受験が認められていませんでした。
しかし、公認会計士法が改正され、2006年の試験からは学歴要件が撤廃されています。これにより、中卒や高卒の人でも試験を受験し、公認会計士を目指せるようになりました。
以前は受験資格が限られていたなかで、学歴を問わず挑戦できるようになったことは、公認会計士制度の大きな進歩といえるでしょう。
公認会計士試験の難易度
公認会計士試験の難易度は非常に高く、医師・弁護士と並んで日本の三大国家資格と称されます。中卒や高卒の人でも受験は可能ですが、国家試験に合格しなければ公認会計士にはなれません。
公認会計士試験が難しい理由として、出題範囲の広さと受験科目の多さが挙げられます。短答式試験は4科目、論文式試験は5科目を受験する必要があります。どの科目も40%以上の正答率が求められ、総合点で一定の基準を満たさなければ合格できません。
合格までに要する勉強時間は約3,000~6,000時間といわれ、1日10時間勉強したとしても1年半~2年以上の学習期間が必要です。このように、公認会計士試験は非常に高いハードルが設定されていることを理解しておきましょう。
公認会計士試験合格者の学歴
中卒や高卒で公認会計士試験に受かる人はいますが、合格者の大半は大学在学中または大学卒業後の人が占めています。
金融庁が公開している「令和5年公認会計士試験 合格者調」によると、大学在学中に合格した人は全体の42.2%、大学卒業後に合格した人は43.4%で、合格者全体の85.6%に達しています。
一方で、高卒者の合格者は全体の6.2%、「その他」の合格者(中卒を含む)は1.7%にとどまり、学歴別では少数派といえるでしょう。
引用:金融庁|令和5年公認会計士試験 合格者調
公認会計士試験は難易度が高いため、大学に進学して会計学や監査論といった専門分野を学ぶことが合格への近道といえます。
公認会計士試験合格後の流れ
難関な国家試験である公認会計士試験に合格しても、すぐに公認会計士としての活動はできません。公認会計士を正式に名乗るためには、日本公認会計士協会に登録が必要です。
日本公認会計士協会に登録するには、会計事務所や監査法人などに就職して3年以上の実務経験を積み、実務補習を原則として3年間受け、修了考査に合格しないといけません。実務経験を積んだのが合格の前後であるかは問われず、合格前の勤務期間を含めることも可能です。
実務経験、実務補習の修了、修了考査の合格をすべて満たしたうえで、日本公認会計士協会に登録することで、正式に「公認会計士」としての活動が認められます。会計事務所や監査法人などに勤務するだけでなく、将来的には公認会計士として独立開業も目指せるでしょう。
中卒から公認会計士になるメリット・デメリット
公認会計士になるには大学への進学が圧倒的に有利ですが、中卒から公認会計士になるメリットもあります。ここでは、中卒から公認会計士を目指すメリットとデメリットについて解説します。
中卒から公認会計士になるメリット
学歴にとらわれずキャリアアップできる点は、中卒から公認会計士を目指す大きなメリットといえるでしょう。公認会計士試験は学歴要件がなく、資格取得後は学歴よりも実力が重視されるため、中卒であっても公認会計士として活躍し、社会的な信頼を得られます。
公認会計士は高収入が期待できる職業であり、社会的ステータスが高い点も魅力です。安定した生活を送れるだけでなく、専門職として尊敬される存在になれるでしょう。
また、公認会計士試験合格後、日本公認会計士協会への登録には3年以上の実務経験が必要ですが、中卒で早くから会計事務所や監査法人で働いて経験を積んでいた場合、大卒より早く登録できる可能性もあります。これも中卒から公認会計士になるメリットの1つです。
中卒から公認会計士になるデメリット
中卒の場合、高校で学ぶべき数学や英語などの基礎知識を独学で補う必要があり、膨大な学習時間が求められます。公認会計士試験は難関であり、合格するにはしっかりとした基礎学力が不可欠です。そのため、高校や大学に進学して基礎学力を体系的に習得するほうが有利といえるでしょう。
また、中卒の人が公認会計士試験の科目免除を受けるのは、現行制度ではほぼ不可能なので、全科目の学習が必要です。その分、試験合格に向けた負担は大きくなります。先述した通り、難易度が非常に高い試験であるため、熱心に勉強しても不合格になる場合もあり、努力が必ずしも報われるとは限りません。
公認会計士に向いている人の特徴
どのような職業にも適性があり、公認会計士も例外ではありません。ここでは、どういった人が公認会計士に向いているのかについて解説します。
論理的な思考ができる
公認会計士は、数字と論理を駆使して物事を分析し、判断を下す職業です。そのため、数字に興味があり、論理的な思考を得意とする人に向いているといえるでしょう。
また、公認会計士試験には論文式試験があり、合格するには論理的に物事を考え、自分の考えを整理して表現する力が求められます。
実務においても、企業会計基準や監査基準などの規定に基づいて論理的に思考し、問題を解決する能力が不可欠です。そのため、基礎学力を習得する段階から、論理的思考を意識して身につけておくのが望ましいでしょう。
自分に合った学び方を見つけ、論理的思考や数字を扱う力を磨いていく努力が大切です。
忍耐力と継続力がある
公認会計士試験に合格するには、忍耐力と継続力が重要です。難易度の高さから長期間にわたる勉強が必要なため、途中で諦めずに粘り強く取り組む姿勢が求められます。1回で合格できなくても、諦めずに努力を続けることが大切です。
また、公認会計士になった後も、忍耐力と継続力は実務において欠かせません。企業監査や財務分析の際、大量の資料をもとに重要な項目を見極めるには、高い忍耐力が求められます。
忍耐力と継続力を養うには、日々の小さな努力の積み重ねが大切です。自分を律し、目標に向かって努力を続ける習慣を身につけることが、長期的な成功への鍵となります。
中卒から公認会計士になるための方法
中卒から公認会計士を目指すには、いくつかの選択肢があります。ここからは、中卒から公認会計士になるための具体的な方法をみていきましょう。
独学で公認会計士試験の受験勉強をする
公認会計士試験は非常に難易度が高いですが、自己管理能力が高ければ、独学でも合格できる可能性があります。独学で受験勉強することは、自分のペースで学習できる点や適切な学習計画によって合格の可能性を高められる点がメリットといえるでしょう。
また、独学の場合、受験対策にかかる費用を最小限に抑えられ、経済的負担が軽減されます。テキストや問題集を購入するだけで済むため、数十万円以上の費用がかかることは基本的にありません。
しかし、公認会計士試験は出題範囲が広く、効率的な学習が求められます。独学だとポイントを見極めて効率的に勉強を進める能力が求められるため、自己管理と綿密な学習計画が重要です。
公認会計士試験の予備校や専門学校に通う
公認会計士試験において予備校や専門学校に通うのは、効率的な受験勉強をするうえで有利です。合格者の多くが予備校や専門学校を活用しており、独学よりも優れた学習環境で勉強ができます。
予備校や専門学校では、公認会計士試験の傾向と対策に特化したカリキュラムを提供しており、ポイントを絞った効率的な学習が可能です。要点をまとめた学習により、短期間で合格を目指せるでしょう。
また、プロの講師による指導を受けられる点も大きなメリットです。疑問点をすぐに解決でき、専門的なアドバイスが受けられるため、理解が深まります。さらに、仲間と一緒に学習することで、モチベーションを維持しやすいのもメリットといえるでしょう。
高校・大学に進学して公認会計士試験の合格を目指す
公認会計士を目指す場合、中卒でいきなり試験に挑戦するのではなく、まずは高校・大学に進学して基礎学力を向上させ、会計学などの専門的な知識を習得する方法があります。実際、公認会計士試験の合格者の多くは、大学在学中や卒業後に合格しているため、進学してから公認会計士を目指すのは一般的なルートといえるでしょう。
高校では、公認会計士として必要な基礎学力を養えるほか、大学では会計学や監査論といった専門的な分野を深く学べます。大学での学びに加えて予備校や専門学校を併用することで、効率的に学習できるでしょう。
また、高校や大学で多様な人々と関わるなかで、社会性やコミュニケーション能力を高められます。学生時代に身につけたこれらのスキルは、公認会計士として活躍する際にも大いに役立つでしょう。
高卒認定を取得して公認会計士を目指す
高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験)に合格し、高卒認定を取得した後に公認会計士を目指す方法も検討してみてください。高卒認定試験の勉強を通じて、公認会計士試験に必要な基礎学力が身につき、これが次のステップへと進むための土台となります。
高卒認定を取得した後は、公認会計士試験の受験勉強を始めたり、大学に進学して専門分野を深めたりすることが可能です。このように、高卒認定を取得すれば選択肢が増え、自分の進むべき道を自由に選べるようになります。
高卒認定試験をサポートする予備校では、専門の講師による指導を受けながら効率的な学習が可能です。まずは予備校に通って高卒認定を取得し、その後専門的な勉強をするのが、中卒から公認会計士を目指す現実的な方法の1つといえるでしょう。
まとめ
中卒であっても、公認会計士になることは可能です。公認会計士試験に学歴要件はなく、中卒者でも試験に合格して登録すると公認会計士になれます。公認会計士になると高い社会的ステータスと高収入が期待でき、学歴コンプレックスもなくなるでしょう。
しかし、公認会計士試験は難易度が非常に高く、まずは予備校に通って高卒認定を取得し、それから専門的な勉強を始めるのが現実的な方法です。この記事を参考に、夢を叶えるための第一歩を踏み出しましょう。